些か古くて恐縮ですが、山本周五郎の「赤ひげ診療譚」
最近またBSで映画の再放映をしていました。
三船敏郎が赤ひげを、加山雄三が登を演じていました。
文句なしにおもしろいです。
五つ☆では足りない
もっとあげたい
☆☆☆☆☆☆でも足りない(と勝手に私が思っている・・・)です。
エリート医師の卵、である登が、どういうわけか
庶民、貧民の施療院、小石川養生所にまわされることとなります。
患者は汚い貧しい貧乏人ばかり
医者としての挫折感を味わい、さらに婚約者に背かれた心の傷を受けた登は
全く反抗的な態度をとり、なかなか養生所になじむことができません。
しかし養生所の患者や巷の患者にふれ、赤ひげの指導についていくうち徐々に成長していく物語です。
初めて読んだ時からずいぶん年月がたっていて、すっかり忘れていました。
「赤ひげ診療譚」・・・ああ、お医者の話ね
と、私も読み始め思いましたが、その実、それのみならず、
これはやはり山本周五郎の江戸の庶民の世界を描いた話でした。
長編ではあるけれど、それぞれテーマのちがう8つの短編からできています。
現代でも通じるトラウマの話、うつ、貧困。
でも、その底に貧しい人々に対する赤ひげの、作者の、人間愛、やさしさが満ち満ちています。
そして登が、名誉、富をけって、この養生所に残る決意をするラストが
待っています。
彼はまた、こうして赤ひげ2号になっていくだろう、ことを思うと
何ともたのもしいです。